辰巳湯(清澄白河)
御多分に洩れずサウナにはまった。
通ってまもなくは「ととのう」の意味がわからなかったがふかしていた煙草を正しく吸えた瞬間ヤニクラを起こしてぶっ倒れた感覚に近かった。
今日は現場が終わったらサウナへ行こうと決めていた。
清澄白河は辰巳湯。
入浴料500円とサウナ料300円のチケットを渡すと、大きなオレンジ色のバスタオルと水色のフェイスタオル、うさぎのヘアーバンドを差し出してくださる。
サウナ室ではMOKUのタオルを頭と顔にターバンの如く巻くのが熱波を防ぐのに好もしいのでヘアーバンドはお返しする。
感じの良いお姉さんは嫌な顔ひとつせず受付してくださった。ありがたい。
パソコンやタブレットの入ったリュックは不思議と小さめの木のロッカーに収まって安堵。
お風呂用の旧めがねにスイッチングして矢も盾もたまらず生まれたままの姿で扉を開けると中央にはプールのように広い浴場が。
奥壁のタイルにはでかでかとした赤富士がどーんと描かれている。崖に立つ男の手からは網が伸びている。何を揚げようとしているのか。
持参のシャンプーとボディソープで身を清め、早速お湯に飛び込む。
とにかく広々して気持ちいい。
ジェットバスの刺激も心地よい。ジェットバスと内湯の区切りがないのが広く見える理由なのかもしれない。
土曜の21:00すぎなので覚悟してきたが、そこまで混んでいなくうれしかった。
ほどなくしてあたたまり、サウナ室へ入ろうとしたが、扉が開かない。
開ける扉を間違えているのかと暫し黙考したが、手首につけているサウナ客用の鍵の先端を扉のくぼみに引っ掛けて引っ張ると開いた。
扉の向こうでオロオロしていた私に目を止めてくださった優しい常連さんが「大丈夫ですか?」と声をかけてくれてサウナマットの洗い方やら諸々丁寧に教えてくださった。
サウナ室は90度を超えていた。
初めて「ヴィヒタ」を見た。本当にあるんだ。天井からぶら下がっていて良い香りがした。
テレビはついているが音量が小さいので座る位置によっては全く気にならない。
ひな壇の左側に設置されているので、段の上で左を正面にして膝を抱えて視聴している人が多めだった。
サウナ室によくある12分時計がなく部屋を見回すと5分計れる砂時計が壁に備え付けてあった。手動でひっくり返すしかない。
ひっくり返したばかりの砂時計を入ってきた方が残りの分数も見ずに逆さにされて驚いた。
本人はテレビを見ているのでとっくに砂がなくなっていることに気がついていない。
すぐに返すのも嫌味のようだし困ったなと思っているうちに暑くなって表へ出た。暑がりな自分に感謝した。
シャワーでマットを洗ったのち毛穴から吹き出る汗を流して水風呂コーナーへ。
見間違いではないと思うが壁に「MAD MAX」と書いてある。
怒りのデスロードじゃと言わんばかりに一気呵成に肩まで浸かると喉の奥がすーっとして冷たい息が漏れる。自分の身体が一本の筒になったような気分になる。
身体を軽く拭いて休憩スペースの椅子に座る。
1回目の休憩で身体がズーンと重くなる。
それからじわーっと身体の芯から冴え渡っていくあの感覚いわゆる「ととのい」を存分に味わう。
2巡目で聴覚が冴え、3巡目で視界がクリアになった。
巡るたびに感覚が開かれていくのがおもしろく、また、体調によっても全然違うので暫く通いがやめられなさそうだ。
水風呂のすぐ隣が露天風呂と銘打ってあるが見上げると屋根。その隣が小さな庭になっている。
窓辺に寄って上を見上げれば月明かりを浴びられたのだろうか?遠慮してしまった。
身支度を整えてドライヤーをお借りする。無料とは珍しい。4台ほどあって待たずに使えた。
サウナの客だけもらえる塩飴を舐めながら表へ出る。初秋のここちよい風に吹かれてサンダルが少し緩くなったのを感じた。
また近く再訪したいと思う。
追記 「MAD MAX」の近くにはボタン?があるらしく、それを押したら天井からざーっと水が出たらしい。確かめにいかねば。